愛されることから逃れられない

クスリをやめてほしい。と、あなたの意志を尊重したい。の間で

大切な友人が違法薬物を使っているかもしれない。家族のような大切な友人だから、本当はやめてほしいと言いたい。だけど本人がそれでいいって思っているなら、その意思を尊重したい。だけど、でも……。どうすべきなのかわからない。どうしたいのかもよくわからない。

友人が心配だという気持ちと、相手の意思を尊重したいという考え。どちらも彼女にとって大切な価値観だからこそ、激しくぶつかり合って苦しい。

薬物をやめる、やめないを超えて、例えば友人が亡くなるときに、あなたはどういう人として覚えておいてほしいんだろう。どのあたりにあなたを感じてくれたらいいんだろう。

そんなことを考えているとき、「やっぱりやめてほしいって言いたい!」と彼女は言った。突然気づいたように顔を上げ、目には涙をいっぱい浮かべていた。

なんだかめちゃくちゃに胸を打たれた。私はその友人に何があったかは知らないけど、きっといろんな事情があって、いろんな心の隙間があって、クスリがそれを埋めてくれるような瞬間があったんじゃないだろうか。

だけどそれはほんの一瞬で、使うたびにむしろ虚しさは広がっていくばかりで、自分の頭や心が壊れていくことが怖くて仕方がない。だってこの頭や心が壊れたら、私って何なんだ。もはや”私が生きている”と言えるのか。

なのにまだ、私のために流される涙があるなんて。私が私でなくなっても、愛されることから逃れられないなんて。